【経営管理室コラム第2回】業務判断の曖昧さが生む”属人化”と”確認コスト”

2026年9月10日

前回は、社内規程の整備において「規程化すること自体が目的ではなく、判断を迷わせない状態をつくることが重要である」という点をお伝えしました。

今回は、その判断基準が共有されていない状態が続いたとき、現場でどのような現象が起きるのかを、より具体的に見ていきたいと思います。

 

1. 判断の拠りどころがないとき、業務はどう動くか

業務の中で判断基準が明確でない場面は、意外と多く存在します。

「この依頼は誰へ回すべきか」「承認はどのタイミングで必要か」「このケースではどこまでが担当者の判断でよいのか」——こうした場面で共通の基準がない場合、各メンバーはそれぞれの経験や解釈をもとに判断するようになります。

一人ひとりの判断が必ずしも誤りというわけではありません。しかし、判断の根拠が共有されていないため、同じ業務でも進め方や対応のばらつきが生まれやすくなります。

その結果、経験を重ねた人に判断や確認が集まり、その人の経験や知識を頼りに業務を進める場面が増えていきます。この状態が続くと、特定の人だけが全体の流れを把握していたり、その人が不在になると業務が止まってしまったりといった状況が生まれます。これが、一般に「属人化」と呼ばれる状態です。

属人化は、担当者の能力や姿勢の問題として語られることもありますが、その背景には、判断の前提となる基準が組織として共有されていないという構造的な要因もあります。本人たちの意図とは関係なく、組織の環境や仕組みによって生まれることがある点がポイントです。

 

2. 「迷うから確認する」という習慣が積み重なるとき

判断基準が曖昧な環境では、もうひとつ特徴的な行動が増えていきます。それが「確認作業」の増加です。

「一応確認しておこう」「念のため聞いておいたほうがいい」——こうした行動は、基準が明確でない場面では自然な反応であり、リスク回避の観点からも適切な側面があります。

ただし、確認が必要な理由が「迷うから」である場合、その背景には基準が整っていないという構造的な問題があります。基準が明確であれば、そもそも確認を必要としないケースも少なくありません。

確認作業が習慣化すると、業務の流れは細かく分断され、担当者の対応待ちによる停滞が日常的に発生するようになります。1回あたりの時間は短くとも、組織全体で積み重なれば、無視できない時間的なロスとなります。また、確認が集中する特定の担当者には、本来の業務と並行して判断対応が増え、負荷の偏りが生まれることもあります。

 

3. 見えにくいからこそ、意識的に扱う必要がある

属人化や確認コストの問題は、売上や利益のように数字として可視化されにくい性質を持っています。そのため、組織として認識・対処されないまま積み重なるケースが多く、気づいたときには定着してしまっているということも珍しくありません。

しかし、その背景には、個人の問題だけではなく、業務判断の前提となる基準が整っていないという環境の課題もあります。

もちろん、すべての判断を細かくルール化する必要があるわけではありません。そのうえで、必要な判断基準を整理し、共有することで、属人化は緩和され、確認作業も必要な範囲に収まっていきます。

「誰に聞けばよいか」ではなく「どう判断すればよいか」が共有されている組織では、業務の流れはより安定し、担当者それぞれが本来の役割に集中できる状態に近づきます。

こうした業務の停滞や負荷の偏りは、目に見えにくいものですが、実は会社が扱うさまざまな「数字」にもその影響が現れます。

次回は、数字は事実を示すだけでなく、組織がどのように動いているか、その“癖”や“傾向”まで反映しているという点について、考えていきたいと思います。

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