社内規程の曖昧さが生む「見えない負荷」とは

2025年12月25日

今回は、経営管理室より、日々の業務運営の中で感じる“社内規程の役割”についてお伝えします。

社内規程は「必ず整備しなければならないもの」と捉えられがちですが、実際には 規程化そのものが目的ではなく、規程化することで業務の生産性や判断スピードを高められるかどうか が重要なポイントだと感じています。

一見すると意識されにくい領域ですが、実は組織の生産性や判断スピードに大きく影響を与えるテーマです。

 

1. 判断が揺らぐとき、現場では何が起きているのか

日々の業務の中で、「就業規則」や「社内規程」という言葉を耳にする機会は少なくありません。ただ、その内容まで明確に理解している人は多くないように感じています。どんな項目が書かれ、何のために存在しているのか——日々の業務の中では意識されにくい領域です。

一方で、管理部門として業務に携わっていると、社内規程がどのように運用されているか、あるいは あえて規程化されていない領域がどこか を目にする場面は多くなります。

その中で特に影響が大きいと感じるのは、「規程が存在しない」ことそのものではなく、判断基準が明確に共有されていないまま運用されているケース です。

たとえば次のような身近なケースが挙げられます。

 ・交通機関が遅延・運休した場合の勤務時間の扱い

 ・急にリモートワークへ移行する必要が出た際の勤務時間の記録

 ・大規模な自然災害発生時の連絡体制や勤務・休暇の判断    

                                                       

これらは、企業規模や組織体制によっては、必ずしも細かく規程化しなくても、決裁権限者の判断に委ねたほうが迅速かつ効率的な場合もあります。しかし、その判断の考え方や基準が共有されていない場合、現場では対応に迷いが生じやすくなります。

ある人は「自己判断でよい」と考え、別の人は「念のため責任者に確認したほうがいい」と判断する——どちらにも悪意はなく、“基準が明確でないため解釈が分かれる” という構造が背景にあります。

 

2. 判断の迷いが、業務に“見えないコスト”を生む

このような判断の揺らぎは、日々の業務の中で確実に影響を及ぼします。

迷いが生じるたびに小さな確認や調整が必要になり、気づかないうちに業務の流れが止まったり、担当者の負荷が増えたりします。特に社員数が増えてくると、こうした確認や調整の積み重ねは、組織全体のスピードや生産性に大きく影響します。
社員が多くなるほど、一定の判断基準を規程として共有することの効果は高まりやすい と言えるでしょう。一方で、中小企業や少人数の組織では、すべてを規程化することが必ずしも最適解とは限りません。
ただし、規程や判断基準が整理されていない状態が続くと、都度決裁権限者への確認が必要となり、その結果として生産性が落ちてしまうこともあります。

また、確認が十分に行われないまま担当者が自己判断をしてしまい、後から問題となるケースもあれば、逆に、決裁権限者に確認できない状況では、担当者が判断できずに業務が止まってしまい、困ってしまうケースも見受けられます。

曖昧さには、想像以上に大きなコストがかかっています。
しかし、このコストは数字として表れにくく、組織として認識されにくいのが難点です。
だからこそ、規程化する部分と、判断を委ねる部分を意識的に整理し、判断を迷わせない状態をつくることは、目に見えない部分で組織を支える重要な取り組みだと感じています。

 

3. 判断基準が整うと、現場はもっと動きやすくなる

ここで改めて考えたいのは、業務における基準やルールの役割です。基準やルールは人を縛るためのものではなく、迷いをなくし、会社の方針に沿った判断を後押しするための土台 となります。

基本的に、業務上の判断は会社の方針、すなわち決裁権限者の判断に従うことが前提となります。
そのうえで、判断が頻繁に発生する領域や、都度確認することで業務が滞りやすい領域については、あらかじめ基準や考え方を整理しておくことで、現場はより動きやすくなります。

一方で、基盤となるルールや判断基準が整理されていない状態では、
確認が必要な場面が増えたり、確認できない状況では判断に迷ったりするなど、業務の不確実性が高まります。
このような状態は、「自由に判断できる」ということとは異なり、結果としてスピードや生産性の低下につながることがあります。

企業が成長するほど、個々に任せる部分と、組織として統一すべき部分の線引きは難しくなります。
だからこそ、規程化する・しないを感覚で決めるのではなく、どこまで会社として揃え、どこから判断に委ねるのか を意識的に考えることが重要になります。

この曖昧さがどのように属人化を生み、確認作業の増加につながるのか——次回はその点について、より踏み込んで考察していきたいと思います。

 

執筆者

経営管理室

岡部 悠介

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