ムダを減らし価値を生む「業務整理」 ― 組織の生産性を底上げする実践プロセス ―
2025年11月26日
こんにちは。MSコンサルティング事業部の谷本です。
当事業部は、経営・マネジメントに関する課題解決を中心に、企業の成長と組織力向上をご支援しています。
本コラムでは、現場の方や実際のプロジェクトで得られた気づきをもとに、経営に役立つヒントをお届けします。
企業が成長フェーズに入ると、多くの組織で
・業務の属人化を減らしたい
・担当者ごとのやり方がバラバラ
・無駄な作業が多く、生産性を上げたい
といった悩みが表面化します。
こうした問題を根本から改善し、生産性を高めるために有効なのが 「業務整理」 です。
私たちも、多くの業務改善プロジェクトや業務統合プロジェクトにおいて、この業務整理を基盤に組織全体の生産性向上を支援してきました。
本コラムでは、そのプロセスを実務で活用しやすい形でご紹介します。

① 業務整理を行う対象(スコープ)を決める
業務整理の第一歩は、「どこを対象(スコープ)に整理を始めるのか」 を明確にすることです。
スコープが曖昧なまま着手すると議論が発散し、“棚卸しが最後まで終わらない” という失敗が起こりやすくなります。
逆に、最初に整理対象を明確にすることで業務整理が進めやすくなり、改善効果を最大化できます。
関係者間で整理の目的や範囲が共有され、議論の効率が大きく向上します。
② As-Is(現状)の業務を可視化する
次に、対象とする業務全体の流れを可視化します。
可視化を行う上では、まずは、As-Is の業務を構成要素ごとに整理し、それをもとに業務フローを作成することが重要です。
その際は、以下の視点で現状を丁寧に書き出すことが重要です。
・業務の目的(Why):この業務が存在する理由(例:売上計上の正確性担保)
・入力情報(Input):業務を開始するために必要な情報や資料(例:発注書、見積書)
・活動内容(Activity / 手順):実際の作業ステップ(例:取引先への見積依頼)
・出力(Output)/成果物:業務の結果として生まれるもの(例:請求書、納品書)
・担当者(Role):誰が実施するのか(例:営業担当者、経理部長)
・使用するツール/システム:業務で利用するツール(例:Excel、基幹システム)
・規定・ルール(ルール/判断基準):業務の判断基準・例外処理・期限など(例:10万円以上は承認要)
さらに、以下の内容も整理し、後続で行うTo-Be(あるべき姿)の業務検討に活用します。
・課題(Issue):As-Is で生じている非効率やボトルネック
・原因(Cause):課題の要因(人・ルール・システム・情報整理不足など)
・改善案(Action / To-Be):To-Beとしてどう設計し直すか
③ To-Be(あるべき姿)の業務を設計する
As-Isで抽出した課題・原因を改善できているかを基準に、To-Beの業務を設計(業務フローを作成)します。
その際には、現場で無理なく運用できる姿を意識すること がポイントです。
作成した業務フローは 業務マニュアルや教育資料などに活用でき、属人化防止にも効果的 です。
実際のプロジェクトでは「今まで進まなかった現場改善が、To-Beの業務フローができたことにより一気に進み始めた」というケースも少なくありません。
④ As-Is と To-Be の業務をマッピングする
業務整理を円滑に行うためには、As-Is と To-Be の対応関係をマッピングする ことが有効です。
これにより、
・どの業務がどの整理後業務に対応しているか
・統廃合される業務はどれか
・新たに追加・システム化すべき業務はどこか
・優先して進めるべき改善点はどこか
が明確になります。
複数部門が関わる業務整理を行う場合は、マッピングを行わないと関係者間で解釈がバラつき、必ず混乱が発生します。
尚、マッピング時に、業務番号(例:A-01〜A-20)を付与することで、対応関係をより明確化することが可能です。
まとめ
業務整理は一見手間のかかる作業に見えるかもしれません。
しかし、取り組み方を工夫することで大きな効果を生むことができる取り組みのひとつ です。
・担当者間の業務ばらつきの可視化と改善
・業務手順・やり方の標準化
・システム導入による経営変革の実現
・業務負荷軽減・属人化の解消
など、多くの成果につながります。
組織として継続的に成長していくためには、定期的な業務整理が欠かせません。
ぜひ、自社の業務を一度見直し、取り組んでみてはいかがでしょうか。
執筆者
MSコンサルティング事業部
谷本 遼平