【HRコラム第2回】人材育成が“機能しない”本当の理由 ――研修では埋められない、「期待・業務・評価」の設計不全
2026年1月31日
現在、多くの企業で「人的資本経営」の重要性が語られ、教育投資は年々増加しています。
労働政策研究・研修機構の2025年調査においても、企業の8割以上が「人材育成は生産性向上に効果がある」と回答しており、経営層・人事ともに育成の重要性を強く認識していることが分かります。
しかしその一方で、
・人が育っている実感が持てない
・育成の成果を経営として説明できない
と感じている企業は少なくありません。
このギャップは、育成担当者や管理職の努力不足によるものなのでしょうか。
実はそうではありません。
問題は研修の実施有無や内容以前に、人材育成の設計そのものにあります。
2. 人事・現場が陥る「3つの不明」
人材育成がうまく機能していない組織を見ていくと、共通して次の「3つの不明」が存在します。
いずれも、育成を設計する段階で本来明確にすべき論点です。
① 期待している行動が明確でない
研修を通じて、
・どのような人材になってほしいのか
・どのような行動ができる状態を目指しているのか
が言語化されていないケースは少なくありません。
「将来のために」「念のために」といった曖昧な目的のままでは、
育成は方向性を持たない活動になります。
この状態では、育成が成功したのかどうかを判断すること自体ができません。
② 学習内容と業務課題が結びついていない
次に多いのが、学習内容と現場の業務課題との関係が整理されていないケースです。
・今の業務のどの課題を解決するための研修なのか
・どの業務シーンで使う知識・スキルなのか
が明確でないまま研修が導入されると、受講者は「なぜこれを学ぶのか」を理解できません。
結果として、学習は知識のインプットで止まり、現場の行動には反映されません。
③ 学習の成果をどう測るのかが決まっていない
さらに、研修後に
・行動がどの程度変わったのか
・業務にどのような影響があったのか
を確認・評価する仕組みがないケースも多く見られます。
管理指標が「受講実績」や「満足度」にとどまっているため、
育成投資が成果につながっているのかを、経営として判断できない状態に陥ります。
3.研修が機能しない本質
企業が人材育成を通じて本当に実現したいのは、
知識を増やすことではなく、現場での行動の変化です。
しかし、
・どのような行動を期待しているのか
・その行動を生むために、何を学ばせるのか
・どこまでできれば成果とみなすのか
が設計されていなければ、学習が行動に変わることはありません。
研修が機能しない本質は、
育成が「行動の変化」までを含めて設計されていない点にあります。
4.なぜ育成の成果が実感されないのか
育成の成果が見えない理由は、社員の意欲や能力の問題ではありません。
期待される行動や判断基準が共有されていない以上、
どれほど学んでも、それが成果として認識されることはありません。
その結果、組織には
「研修は実施しているが、人は育っていない」
という感覚だけが残ってしまいます。
5.結びに:育成とは、投資判断である
人材育成は、研修を増やすことでは解決しません。
経営として本来問うべきなのは、次の3点です。
・どのような行動を期待しているのか
・その行動につながる学習を、どの業務課題と結びつけているのか
・学習の結果、その行動がどの程度実現したのかを、どう判断するのか
この3点が整理されていない限り、
育成は「実施している事実」だけが残り、成果として評価されることはありません。
人材育成とは、コストではなく将来への投資判断です。
期待する行動、そこに至る学習、そして成果の確認までを一体で設計してこそ、
育成投資は「やっている感」から「経営成果」へと変わります。